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千歳と、泳ぐ竜
2000.01.30初出 / 2000.12.30発行「FAKERHOLIC」所収
text and edit by 成瀬尚登

「……しっかし、毎年毎年、よく続くよな、これ……」

 春彦は、あくびをかみ殺しながら「紅白歌合戦」を見ていた。

 あと1時間もせずに、年が明ける。

 年は明けるが、特に感動もなにもない。

 非常勤とはいえ、高校の美術講師をしていると、1月の年越しよりも、4月の「年越し」の方を感慨深く思わずにはいられない。

 それはさておき、全国的に新年という祝賀ムードであり、基本的にはその流れに従おうとする春彦ではあったが……ひとりでは、どうにもならない。

 千歳とは、29日から会っていない。両親とも年末年始には家にいるため、抜け出せないのだ。そのため、毎晩毎晩、千歳から電話がかかってきたのだが、今日に限っては、電話すら来ない。

 家族と初詣、か。それも悪くないか……。

 春彦は、年が明けたら飲むことにしていたウィスキーのボトルをとりに、こたつから立った。

 その時……。

”ピンポーン”

 チャイムが鳴った。

「こんばんわー」

 ドアの向こうから、聞き慣れた声がする。

 誰かがわかってはいるが、春彦はわざと聞こえないフリをした。

「あれー、お兄ちゃん、いるよねー」

 黙々と、冷凍庫から氷を出す。

「お兄ちゃぁん……返事してよぉ……」

 すこし涙声になる。

 春彦はため息をつくと、ドアの鍵を開けた。

 ドアの向こうでは、千歳がむくれていた。

「お兄ちゃん!」

「や、やあ、千歳……」

 予想以上の怒りの反応に、春彦はたじろいだ。

「聞こえてて、意地悪したんだね」

「そんなことはないぞ、紅白見てて、気がつかなかっただけだ」

「そんな見え透いた嘘つかないでよね。その手に持っているものは何かな」

 千歳の視線を追ってみると、自分の手はしっかりとウィスキーのボトルを握っていた。

「せっかく愛するお兄ちゃんのところに、危険を顧みず来たっていうのに、ひどい仕打ちだよね」

「あ、あはは。まあまあ、とりあえず、中に入れよ」

 春彦には、それをいうのが精一杯だった。

「かんぱーい」

 春彦がウィスキーを、千歳が、しぶしぶだが、サイダーのグラスを持って乾杯する。

 時はちょうど新年を迎えた時だった。

「あけましておめでとう、お兄ちゃん」

 だが、それに答える間もなく、春彦はぐいっとグラスを傾け、半分ほど飲む。

「……で、よく来れたな、うちに」

「あ、うん……」

 春彦のぶっきらぼうな態度に憮然としていた千歳は、その問いにグラスを置いた。

「てっきり、家族で初詣に行っているのかと思った」

「うん、そのつもりだったけど……」

 千歳は春彦を見つめる。

「どうしても、お兄ちゃんに会いたかったから、嘘ついて、来ちゃったよ」

「そ、そうか……」

「お友だちと受験勉強するって言って、家を抜けてきたんだ」

「受験勉強……千歳、もう推薦決めたんだろ」

「知ってるの、お姉ちゃんしかいないし」

「なるほど」

 春彦はぐいっとグラスを空けた。

「ところでさあ、お兄ちゃん……」

 千歳が、身体をぐっと春彦に寄せてくる。

「初詣、行かないの?」

「今の時間、混んでるからなあ……」

「初日の出は?」

「寒いし。曇ってたら意味ないから、別にいい」

 無碍に答える。

「じゃあ、どうしようか……お兄ちゃん……」

 頬を赤らめ、上目遣いで、千歳はねだるように言う。

 千歳が何を求めているのか、春彦にはわかる。

 だが……。

「お絵かきでもするかな」

「お絵かき?」

 意表をつかれた言葉に、千歳が唖然とする。

「そ、書き初め書き初め」

「そんなの、いつだってできるよ。それに、キャンバスもないし、絵の具もないし、どこで何を書くっていうのさ」

 春彦は、ニヤリと笑った。

「キャンバスなら、ここにある……」

 そう言うが早いか、おもむろに千歳の背後をとり、手を回して千歳の胸をつかむ。

「あ、いや。乱暴なのは嫌……」

「誤解するなって、ここにかくんだよ……千歳の背中」

「ボクの背中?」

 肩越しにきょとんとした顔をみせる千歳。

「そ、辰年だから、竜の絵はどうだ?」

 その言葉に、千歳の顔が急に不安になる。

「ええっ、ボク、お兄ちゃんのことすごく愛しているけど、でも……入れ墨は嫌だよ……」

「わかってる。入れ墨なんかするわけないだろ。絵の具で描くだけだ」

「ちゃんと落ちるかな……」

「水彩絵の具を使うから大丈夫だ。後でちゃんと俺が洗ってやる」

「お兄ちゃんに洗ってもらうなら……いいかな……」

 千歳は嬉しさと恥ずかしさの入り混じった顔で頷いた。

 浴室。

 お湯を半分くらいはった浴槽の内側を向くように、千歳が浴槽のへりに腰をかけている。

 バスタオルを身体の前にあて、背中を春彦に向けている。

 春彦は筆に水色の絵の具をつけ、おもむろに千歳の背骨にそって筆を這わせた。

「ひやああ!」

 千歳が身体をのけぞらせる。

 筆が背骨からそれ、千歳の腰のくびれの方へ逸れてしまう。

「おいおい、動くなよ」

 お湯を手ですくって千歳の裸身にかけ、絵の具を落としながら春彦は言う。

「だって、くすぐったいんだよ、筆が」

「我慢しろ」

「ううう……」

 おとなしく千歳がもとの姿勢に戻ると、春彦は水色の絵の具で再び千歳の背中に色を塗り始めた。

「あ……ゃ……ん……んん……!」

 少しずつ、千歳の背中が弓なりになる。

「おいおい、動くなって言っただろ」

「わかってるけど……どうしても、くすぐったくて……」

「こっちも努力しているんだ。千歳もがんばれ」

「うん、お兄ちゃん、がんばるよ……」

……20分経過……

「千歳、立て」

「えっ? どうして?」

「もっと下の方まで描きたいから、浴槽から出て、立ってくれないか」

「うん、いいよ。ちょっと向こうむいててね」

 春彦は言われたとおり視線をそらす。

 千歳が浴槽をまたぐのを気配で感じ取った。

「……いいよ、お兄ちゃん」

 春彦が振り向くと、千歳の白い双丘が目の前にあった。

 千歳は、前を隠すように、タオルをもって立っていた。

 おもむろに、春彦は千歳のやわらかいところに手をかけて、こねはじめた。

「あ、だめ……」

「……よし、これくらいやわらかければいいだろ」

 あくまで平静をよそおって、春彦はさらに筆を伸ばす。

 千歳の腰に筆をおき、そのまま下へとすべらせていく。

「きゃあ!」

 千歳が跳ねるように身体をよじると、抗議する視線を春彦に送った。

「お兄ちゃん、変なところに、筆入れないでよ」

「しょうがないだろ。千歳のここがこう……」

 春彦が筆を千歳の双丘の割れ目に差し込んでいく。

「あ、いや……」

「……くぼんでるんだから」

 筆で、千歳の深いところをさわっと撫でる。

「というわけで、我慢しろ、千歳」

「はぁい……」

「しかし、塗りにくいお尻だな、千歳」

「余計なお世話だよ」

 春彦の描く竜は、千歳の双丘をとおり、白い太ももにまで姿を伸ばしていった。

……35分経過……

「ふう……ちょっと見てみ、千歳」

 春彦は立ち上がって、その後ろのある鏡を、千歳のために避けた。

 うん、と言って、千歳は肩越しに自分の背中を見る。

 途端に、千歳の顔に驚きの顔になった。

「すごい……」

 精巧な昇り竜の姿が、千歳の身体に描かれている。

 竜が千歳の太ももから昇り、双丘を抜けて肩口へと昇っていく光景、それは、千歳の白い肌に良く映えた色彩だった。

 そして、同時に千歳自身をも輝かせる……。

 千歳はうっとりしてそれを眺めた。

「綺麗……さすが、お兄ちゃんだ。どうすれば千歳が綺麗になるか、わかってるんだ」

「……さて、千歳」

 千歳の陶酔感に割り込むように、春彦は言った。

「前、向いてもらおうか」

「えええっ!」

 途端にびっくりした顔になる千歳。

「これで終わりじゃないの?」

「ああ……」

 春彦はため息をつき、バツの悪い顔をした。

「俺としたことが、キャンバスの大きさを見誤ってしまったようだ……もっと、背中が大きいと思ったんだが」

 すると、千歳が頬をふくらませてそっぽを向いた。

「ふんだ、どうせボクは太いって言いたいんでしょ」

「そんなことはないぞ」

「ほんと?」

「とりあえず、前を向け」

「あう、答えになってないよ、お兄ちゃん……」

 

 

「ちょっと向こうむいて、待ってね……」

「またか……」

 春彦はまたも視線を逸らす。

 ややあって、千歳の声と共に、春彦は振り向いた。

 浴槽のへりに、こんどはこちらを向いて千歳が座っている。

 恥ずかしそうに顔をうつむき加減に傾け、上目遣いで春彦を見ている。

 腰には隠すようにタオルが置かれている。

 そして、腕を組んで、胸を隠していた。

 春彦は憮然となった。

「腕を解かなきゃ、描けないだろ」

「だって、お兄ちゃん、恥ずかしい……」

 千歳が顔を真っ赤にする。

「恥ずかしいって、千歳の胸はもう何度も見たぞ」

「それとこれとは話が違うんだよ」

「それはわかるが……そのままじゃ描けないぞ」

 真摯な態度で春彦が説得する。

「わかったよ、お兄ちゃんの言うこと、聞くよ……」

 千歳が腕を解く。

 その下から、ふるるんという音が聞こえてきそうに震えながら、千歳の乳房があらわれた。

「こ、これでいい?」

 腕をへりにつっぱり、あさっての方向に視線を向けている。

 春彦は、いきなり、筆を千歳の乳房に立てた。

「あん……」

「ペチャパイも、少しは大きくなったんだな」

「ふん、だ。余計なお世話だよ」

「もっとも……」

 春彦は筆をそのまま千歳のとがった乳首へ向けた。

「この方が描きやすいけどな」

「あ、いや……」

 千歳の喘ぎを敢えて無視し、春彦は筆に絵の具をつけ、描画を再開した。

……さらに15分経過……

「あはっ!」

 千歳が半身をよじる。

「動くなって……ここが大事なところなんだから」

 春彦の絵は、千歳の脇から胸の周りへと進み、いよいよ千歳の胸の膨らみへ及んでいた。

 だが、そこにきて、なかなか筆が進まないでいる。

「だって、お兄ちゃんの筆の動き、いやらしいんだもん」

「馬鹿言え。お前が感じすぎるだけだ」

「そんなことない……ん……あっ……そこ……」

 ついに、千歳の口から、甘いため息が漏れた。

「なんだ、千歳、本当に感じてるのか」

「感じるようにしたの、お兄ちゃんでしょ!」

「……さ、続き続き」

 春彦はそれを誤魔化すように、さらに筆を進めた。

「あっ……ああ……ん……」

……10分後……

「ほら、立て」

 ぶっきらぼうに春彦は言う。

「できたの?」

「まだだ。そこにも塗らないと」

 春彦は千歳の顔を見ずに、筆を洗いながら言う。

「そこって……ここにも?」

 千歳が不安そうな声で言う。

 春彦は千歳に向き直った。

「そうだ。タオル、取れ」

「……うん」

 千歳は、タオルを取り去った。

 閉じ合わさった千歳の脚の間から、茂みがあらわになる。

「脚も開いてくれ、千歳」

「お兄ちゃん!」

「千歳……」

 まじまじと、春彦は千歳を見る。

「う、うん……わかったよ、お兄ちゃん」

 おずおすと、千歳は、春彦の目の前で、脚を開いていった。

 千歳の脚の付け根から桃色の花びらがのぞく。

「片足を、へりにのせて……」

 あえて淡々とした口調で春彦は指示する。

 千歳は言われるままに、右足をへりにのせた。

 千歳の花弁が、ぱっくりと開いている。

「丸見えだな」

「恥ずかしいよ……」

 充血して赤くなった千歳の花弁は、すでに千歳の蜜で濡れそぼっていた。

 小指の先ほどの千歳の真珠も赤くしこって外に飛び出ている。

 そして、その下には、千歳の別の口が控えめに開いていた。

 春彦はそこに筆を付けた。

「ああ!」

「ここは水つけなくてもいいから、楽だな」

「ああっ、お兄ちゃん……ん……ああ……いやっ……あん……」

 千歳の蜜で絵の具を溶き、それで千歳の花びらを染めていく。

「……この毛、邪魔だな……」

 筆の端の方で、千歳の茂みをかき分けながら言う。

「お兄ちゃん、それは許して、お願い……」

 すっかり女の顔になった千歳が、春彦をすがるように見つめる。

「ああ。そのかわり……」

 春彦はいきなり筆を、千歳の真珠に押しつけた。

「あああっ!」

 身体ががくっと揺れる。

 そのまま、筆をまわし、筆全体で千歳のそれを刺激する。

「い……いや……はあ……だめ……だめぇ……!」

 首を振って、千歳は刺激に耐える。

「お兄ちゃん……許して……もうボク、だめ……」

 涙声で、千歳が懇願する。

「わかった」

 春彦はそう答え、立ち上がった。

 腰に巻いていたタオルを解くと、春彦の勃起したそれが姿をあらわす。

 羨望のまなざしでそれを見つめる千歳。

 浴槽のへりに背骨がくるように、みずから姿勢をずらす。

 春彦は浴槽にまたがり、千歳の裸身を見下ろした。

 昇竜が、千歳の身体を背中からつかんでいるような構図……。

 春彦は千歳の中にみずからを沈めていった。

「ああん!」

 千歳がひときわ高い声をあげて、春彦を迎え入れる。

 そこは既に溢れんばかりに潤っていた。

「お兄ちゃん……いい……いいよ……」

 千歳の乳房が揺れる。

 そこには、竜の爪が……千歳の乳房を握っている。

 その乳房を春彦はぎゅっとつかむ。

「お兄ちゃん、痛い!」

「千歳、この胸は、誰のものだ?」

「これは……お兄ちゃんのものだよ」

 それに答えるかわりに、春彦は千歳の乳房をこねはじめた。

「いい……いいの……すごいよ……いつもと違う……」

 絶え絶えに千歳が声をあげる。

 絵の具がとけて流れていくのもかまわずに、春彦は千歳の胸をもんだ。

 そして、腰も。

「ダメ……ボク、もうダメ……いっちゃう……あっ……あああっ!」

 ぎゅっと春彦のそれが千歳の中で締まる。

 そして、次の瞬間、がくんと千歳の身体が跳ねた。

 何度も身体を震わせる。

「はあ……はあ……」

 快楽に浸りきった笑みをうかべる千歳。

 そのあっけなさに、春彦は唖然とした。

「なんだ、もうイッちゃったのか、千歳は」

「うん……でも……ボク……」

 朦朧としたふうに、千歳はとりとめのない言葉をつぶやくと、からだを起こした。

 おのずと、春彦のそれが千歳から抜ける。

 千歳は、今度は春彦の目の前で身体を反転させると、浴槽のへりを抱えるようにうつぶせになった。

「もっと……お兄ちゃんに、してもらいたい……」

 そして、みずから双丘に手をかけて、割り拡げた。

 春彦は息をのむ。

 引き寄せられるようにして、春彦は千歳の身体に覆いかぶさっていく。

「前と後ろ、どっちがいいんだ?」

「お兄ちゃんの好きな方で、いいよ」

 春彦は、狙いを千歳のかたい蕾の方へ定めた。

 千歳の蜜でぬるっとしたそこが、春彦のそれで押し広げられていく……。

「あっ! あっ! お兄ちゃん……!」

 千歳は、身体の力を抜いて、必死に春彦を受け入れようとする。

 その健気さにうたれ、春彦はさらに奥へと進んでいく。

 やがて、根元までおさまったとき、どちらともなく、深いため息をもらした。

「……ボクも、そっちがよかったの、お兄ちゃん」

 ぎゅっと、千歳の蕾が締まる。

 ひくひくと脈動が、ざらりと蠕動が伝わってくる。

 春彦は千歳の身体をやや起こし、背中から乳房をつかむと、腰を動かしはじめた。

「んん……んぁ……はあ……ん……もっと……!」

 激しく喘ぐ千歳。

 その瞬間、その背中に、竜が踊った。

 それはまるで、千歳の身体を蹂躙するかのように絡みつき、千歳を絞っている。

「いいの……お兄ちゃん、ボクのこと、めちゃくちゃにして……!」

 髪を包んでいたタオルがとけるのもかまわず、千歳は長い髪を振り乱して悶える。

 千歳に絡む竜もまた、千歳の身体を逃がさないように、うごめいて見えた。

 春彦の中に奇妙な嫉妬心が浮かんできた。

 千歳の胸から手をはなすと、白い双丘をぎゅっとつかみ、一段と深く千歳の中に沈める。

「ああ! 深いっ、深いよ、お兄ちゃん!」

「いいのか、千歳、俺がいいのか!」

「うん、ボクは、お兄ちゃんがいいの! ああ! お兄ちゃん……!」

 さらに一層、千歳の中がきつくなる。

 春彦の全体が千歳の襞にこすられる。

「うう……いくぞ、千歳……」

「きて……ボクの中に、いっぱいきてぇ……!」

 ぐぐっと千歳が身体を春彦に寄せる。

「うぐっ、千歳……ふう……はぁああ!」

……どくん、と音がするくらいに、春彦は千歳の中で放った。

「あ、熱い……」

 背中をぶるぶると震わせて、千歳が喘ぐ。

 喘ぎながら、中がうごめく。

 断続的に襲ってくるあらたな快感に、春彦はなすすべもなく、千歳の中にすべてを吸い上げられた。

「……千歳……」

 やがて、春彦は千歳に身体をあわせると、耳許でささやいた。

「ごめんな……」

「いいんだよ、お兄ちゃんがよかったら、ボクも嬉しいんだ……ボク、綺麗だった?」

 千歳はまるで夢心地のような笑顔を見せた。

「……『だった』じゃない」

 そして、春彦は千歳の唇に唇を重ねた。

「……今年もよろしく、千歳」

[千歳と、泳ぐ竜 FIN]    


◇P O S T S C R I P T◇

「Natural 身も心も(F&C)」の千歳の小説です。サンシャインクリエイション6(2000/01/30)で配布しました。そもそも、どういったいきさつでコピー誌を配布したかと申しますと……。

 成瀬尚登は自他共に認めるピカチュウ好きです。当時ポケットピカチュウカラーなる万歩計モドキが登場しまして、私は当然ゲットしていたわけですが、なかなかワットを貯めることができませんでした。

 理由は簡単で、「かなしき いさよひ」「Soeur caressante」という新刊2冊を抱えて修羅場だったために、あまり歩く機会をつくれなかったからです。

 ワットが貯まらないと、ピカチュウと仲良くなれない。これは困った。

 では、どうするか……そうだ、ワットを寄付してもらってはどうだろうか。もちろん、タダでいただくのは忍びありません。そこで、急遽、このコピー誌を作ったという次第でした。

 もっとも7部しか出なかったので、その意味では不遇なコピー誌ではありました。

 「Natural」は美術講師が主人公なので、竜の絵を千歳の背中に描くというアイデアはすんなり出てきました。辰年ということもあって、竜の入れ墨の入った年賀CGをネットでたくさん見かけましたので、その影響も受けたと思います。

 ところで、なぜ千歳なのか。

 2000年ということで、世の中、「ミレニアム」ブーム。

 ミレニアム……千年……千歳。

 そんなシャレもこめてあったのですが、さすがに誰も気付かなかったようです。


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