【ご注意】 この小説には18歳未満の方が読むのに相応しくない描写を含んでいます。 18歳未満の方の閲覧を一律に固く禁じます。 また、18歳以上であっても、性的描写に対して不快感や嫌悪感を抱く方は、閲覧をご遠慮ください。 →[ i n d e x ] |
不思議な不思議な魔法の石鹸 | ||
2000.12.30初出・同日発行「FAKERHOLIC」所収 | ||
text and edit by 成瀬尚登 | ||
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不意に、健太郎は目を覚ました。 枕元の時計を見ると、日付の変わったばかりの午前0時15分。 おいおいと、やや呆れ気味につっこみを入れ、ふたたび布団にもぐる。 静まり返った部屋。 時計の針の音、電気機器の主電源の音だけが、わずかに聞こえている。 その時、健太郎は、耳を澄ませた。 それらの無機質な音に混ざって、確かに異質な音が入っている。 しばらくの間、それをじっと聞いていたが、やがて意を決して布団から起きあがった。 階下の廊下には、灯りが漏れていた。 浴室の方からだった。その音も、浴室に近づくに連れて大きくなっている。 泥棒……活字の世界にしか見たことのない存在が、いきなり現実世界にあらわれたことに、健太郎は動揺を隠せなかった。 だが、その予兆はあった。先週の棚卸しの際に、どうしても計算が合わなかった。計算が合っているなら、仕入れた品物がひとつ足りなくなっているはずだ。 額も大きくはないし、何を仕入れたかも記憶があやしい。 そんなことで、その時は捨て置いたのだが……。 浴室の前で、健太郎は足をとめた。 緊張のあまり、息をのむ。 恐い。 このまま踏み込んでいいものか。 いきなり殴りかかられた場合、勝てる可能性は、低い。 刃物など持っていた日には目も当てられない。 では、警察を呼ぶべきか。いや、呼んでいる間に、逃げられてしまうかもしれない。 あるいは、自分とスフィーを人質に立てこもって……。 健太郎は首を振った。 考えてもきりがない。ただひとつ言えるのは、自分はここの主人であるということだ。 ぎゅっと拳を握って、健太郎はいきなり浴室のドアを開けた。 「あ……」 くりっとした瞳と、目が合う。 健太郎はそのまま固まった。 髪をタオルで結い上げ、なだらかな胸を石鹸の泡いっぱいにした、半裸の少女の姿。 まぎれもなく、スフィーだった。 「きゃあああ!」 叫び声。 次の瞬間、健太郎の視界に何かがとんでくるのが見えたかと思うと、そのまま一気に暗転した。
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スフィーはそれを「魔法の石鹸」と呼んだ。 先週のフリーマーケットでのこと、スフィーはその石鹸をしげしげと眺めた。 売り主は「美容効果でもあるんじゃないの。よく知らないけど」と、何もわかっていない様子だった。 同じ売り主が別の魅力的な骨董品を売っていたので、健太郎はその石鹸も合わせて買い取った。 そして、その石鹸は、いつのまにか倉庫から姿を消していたのだった。
「この石鹸からは、強い魔力を感じるのよ」 スフィーは楽しそうに言った。 「あー、そうですか、そうですか」 まだ痛む頭をさすりながら、健太郎は投げやりに言った。 「いい加減、機嫌をなおしてよ、けんたろ……」 スフィーは苦笑する。 「仕入れは合わないし、泥棒かと思って突入すれば痛い目に遭うしなー。これも全部スフィーの仕業とはねー」 「そう言わないでよ、けんたろ。悪いと思ってるわ、うん、反省してますって」 「……スフィー?」 おもむろに健太郎は向き直って、横柄な視線をスフィーに投げつけた。 「な、なにかな、けんたろ」 「あの石鹸、何に使ってたんだ?」 「な、なにって……あの……そう、お風呂に入ってたのよ」 「こんな時間に風呂か? それに、おまえ、今日は一番風呂を頂戴してたよな」 じと目で見返す。 「だいたい、あの石鹸、何に使ってたんだ」 「それは……」 そう言ったきり、スフィーはうつむいてテーブルに「の」の字を書きはじめる。 逃がさないぞとばかり、スフィーをにらみつける健太郎。 「……ね」 「は?」 かすかに聞こえた声を問い返すと、突然スフィーは顔を上げて、苛烈な表情で応えた。 「胸よ、胸! あの石鹸を使って、胸を……!」 「胸を?」 だが、動じずに健太郎は返す。 気勢をそがれた形で、スフィーはためらいながら続けた。 「む、胸を……おおきく……したかったのよ」 妙な沈黙が包む。 「はあ?」 思わず、健太郎は眉を寄せる。 こほんと、スフィーは咳払いをした。 「美容に効果があって、魔力があるんだったら、きっと胸も大きくなるはずなのよ」 「で、効果は?」 「それは……」 その容赦ない言に、スフィーはしゅんとなる。 石鹸は先週仕入れたのだから、計算上、スフィーは既に1週間ほど石鹸を使い続けていることになる。 だが、めだってスフィーの身体に変化があったとは感じられないし、スフィーの今の態度からもそれがうかがえる。 健太郎はため息をついた。 「あのな……」 「そうだ、けんたろ!」 遮るように、スフィーは叫んだ。 「けんたろが洗ってよ」 その言葉に、健太郎は絶句した。 「おれが、洗うって……それ……」 「胸は、男の人がもむと膨らむって聞いたことがあるのよ。そうよ、きっとこの石鹸は、男の人に洗ってもらわないと効果がないんだわ」 「本気か、スフィー」 「うん、本気」 スフィーは屈託ない笑顔を見せた。
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浴槽のガラスに、スフィーの陰が映る。 健太郎は腰掛けにすわって待っていた。 別に何かをされるわけでもないのだから、Tシャツに短パンの三助スタイル。 ガラッという音がして、スフィーがその姿を現した。 バスタオルで身体を隠し、恥ずかしそうに上目遣いで健太郎を見る。 おずおずと歩み寄り、健太郎の前の浴槽のへりに腰を下ろす。 そして、意を決してバスタオルをとった。 ショーツを身につけただけの、半裸姿。 白い肌。つるりとした肢体に、わずかに膨らんだ幼い乳房が控えめに自己主張している。 健太郎は、自らの役目を忘れて、それに見入った。 「……けんたろ!」 恥ずかしさを怒りに混ぜて、スフィーはこつんと健太郎の頭を叩いた。 「あ、ごめん……」 健太郎は我に返ると、手を洗面器の湯に浸し、ついで、魔法の石鹸を両手でこすり合わせて、泡立てた。 その手を、スフィーの乳房へと伸ばす。 ふにゅっ 「あ……」 ぴくっとスフィーの肢体が跳ねる。 かまわず、滑らせるように、手のひら全体で撫でる。 「やあっ……あっ……やんっ!」 胸でさらに泡立てるように、優しく。 「んん……いやっ! もう……」 なされるがままのスフィーだったが、急に腕を伸ばして、健太郎の手首をつかんだ。 「けんたろの、エッチ」 すねるように抗議する。 「おまえがこうしろって言ったんだろう、スフィー」 「そ、それはそうなんだけど、けんたろの手の動き、いやらしいのよ」 敢えて憮然とした表情で、健太郎は応えた。 「じゃあ、やめるか?」 「……ううん、続けて」 スフィーがつかんでいた手を離す。 健太郎はふたたび手を動かしはじめた。 そのうちに、ぽつんとしたしこりを乳房の先から感じた。 「くすぐったいよ、けんたろ……」 切ない吐息混じりにスフィーがつぶやく。 健太郎は、その乳房をつかもうとした。 だが、石鹸の泡の滑らかな感触と、乳房の幼さから、つるりと逃げてしまう。 「はあ……はあ……」 やがて、スフィーの口から喘ぎ声が漏れはじめた。 健太郎も、心臓が破裂しそうなくらいに鼓動していることに気付いていた。 いや、破裂しそうなのは心臓だけではなかった。それも、いまにも破裂しそうなくらいに雄々しくたぎっていた。 「けんたろ……」 顔を上げると、スフィーが視線を落としている。 その先にはスフィーのショーツがあった。 それはすっかり石鹸の液で濡れてしまい、そこに隠されているクレバスをはっきりと形づくっていた。 「……ごめん、脱ぐね」 「あ、ああ……」 スフィーは立ち上がってショーツに手をかけた。そして、健太郎の目の前で脚を上げてそれを脱いだ。 魅入られたように、健太郎はスフィーの裸体を見つめた。 肉感をまだあまり感じさせない白い太もも、その先に、肌と同じ色の白い先割れの丘が、ほこらしげに露わになっている。 石鹸の泡が胸から垂れはじめ、なだらかな線を描いて、そのクレバスの中へとつたっていく。 「……女の人の裸を見るのは、初めて?」 「ああ……」 見飽きないとばかりに、健太郎はスフィーの肢体から目を離さずに応えた。 「結花のを見たことがあると思ってたよ」 「すふぃ……」 健太郎は顔を上げた。 「あはは、そんなことないよね」 スフィーはまた浴槽のへりにすわった。 健太郎の手が、今度はスフィーの脚の付け根にへ向かう。 翳りのない、つるつるとした丘に指をすべらせ、そのままクレバスへと忍ばせていく。 スフィーはびくっと肩を振るわせた。 熱い花弁、それをかき分けると、そこにはとろけるような蜜の泉が現れた。 「ああ……」 ため息まじりに、スフィーは声をあげる。 たぐるようにかき回す。 「あ、そこ……んんっ!」 花弁の合わせ目に指先が触れると、スフィーは身体をのけぞらせた。 くりくりと、そこを愛撫する。 「あっ、あっ、だめっ、けんたろ……ああん……」 合わせ目に滑り込ませていた指先。 やがて、ぽつりというしこりが感じられた。 「ちからが……はいらないよ……」 閉じ合わさっていたスフィーのひざが、ガクガク震え出した。 指先をそこからはなす。 充分に潤った泉の口に中指をあてがい、慎重に押し入っていく。 「あっ……ああ……」 ざらりという感触。石鹸と、スフィーの蜜によって、きついながらもするすると、健太郎の指を受け入れる。 もう少しですべて指がおさまるというあたりで、指先に何かがあたった。 きゅっ 心地よい締め付けが、スフィーの中に入っている指を包んだ。 スフィーの表情は、愉悦に歪んでいるように見えた。 指を曲げてスフィーの中を刺激し、同時に、親指で花弁の合わせ目に突出しているしこりを撫でる。 「んん! ああ! けんたろ、だめっ……!」 こらえきれず、スフィーは首を振る。 蜜を掻き出すように、中指はスフィーの蜜壺をえぐる。 いつくしむように、親指でスフィーの真珠をこする。 「いや……いっ……いく……イッちゃう……」 あごを上げて、白い喉をむきだしにする。 そのひざは艶やかに大きく開かれる。 健太郎の指が、さらに深い部分を削った。 「だめ! ああっ……あああっっ!」 びくっ、びくっ! 健太郎の目の前で、スフィーはすべてをさらけ出した。 背中をぴんとのけぞらせ、幾度となく小さな肢体を激しく跳ねさせた。 「はあぁ……」 目を閉じ、半開きになった口から悦びのため息が漏れる。 すると、不意に健太郎の手に暖かいものを感じた。 花弁から、蜜とは違う、透明な液が溢れ出していた。 「いやぁ……見ないで……」 どうすることもできず、うつろな目でスフィーがそれを見つめる。 健太郎は、締まったスフィーの中から指を抜くと、それを手で受けつづけた。
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「……あのね、けんたろ」 翌日の夕食後、健太郎が立ち上がると、スフィーは上目遣いに言った。 「なんだ?」 とぼけたふうに、健太郎が問い返す。 「わかってるくせに」 「えー。言わないとわからんぞ」 「もうっ! あの……ね、けんたろ。今日も……魔法の石鹸を使ってよ」 恥ずかしそうなスフィー。だが、健太郎は平然と応えた。 「ひとりで使えばいいじゃないか。別に俺がいなくてもいいだろ」 すると、スフィーは笑顔で言った。 「今日は、私がけんたろのこと、洗ってあげる」 健太郎はうなずいた。 俺があれを使ってもなあ……という言葉は、敢えて飲み込んでおいたのだった。
[不思議な不思議な魔法の石鹸 FIN] |
◇P O S T S C R I P T◇ 「まじかるアンティーク(Leaf/Aquaplus)」のスフィーの小説です。 |